金融機関がIT(情報技術)機器を使った顧客サービス向上に力を入れている。印鑑不要の窓口サービス、米アップルの多機能情報端末「iPad(アイパッド)」を活用した投信の商品案内、ATM(現金自動預払機)での医療保険販売などなど…。景気低迷で企業向けの融資が伸び悩むなか、業務の効率化と利便性向上を追求し、個人向け営業の強化を図っている。
【表でみる】国内電子書籍の主な端末とサービス
大阪市中央区のりそな銀行北浜支店。顧客対応ブースには、銀行窓口におなじみの伝票類がない。代わりに置かれているのが、指の静脈認証装置とタッチパネル式のモニター画面。銀行の手続きに必須だった「印鑑不要」を可能にしたシステムで、定期預金の口座開設や、投資信託購入などに利用できる。
利用者は静脈認証で本人確認を受けたあと、窓口担当者に購入希望商品を伝え、希望内容の商品をモニター画面で確認し、OKなら手続きは完了となる。住所、氏名、押印の手続きはない。例えば投信の購入なら、商品一覧をモニターに表示し、タッチパネルで自由に選ぶだけで、商品の詳しい紹介も受けられる。書類への記入は確認の署名ぐらいで、従来の四分の一程度になった。
「書類記入が減り、高齢者に好評です」と中尾健一北浜お客さまサービス部長は胸を張る。サービスは昨年11月から同店など全国4店舗で試験的に始めたが、今夏までに全店舗に拡大することが決まった。
「この画面で資料請求が可能です」。三井住友銀行のATMを利用すると、手続き完了までの間に表示されるメッセージだ。医療保険や投信、住宅ローンなど同行の商品一覧を表示。「請求する」を押すと、後日資料が郵送されてくる。資料を送付した顧客には担当者からメールや電話で連絡も入れ、商品を紹介する。
メッセージを表示するのは、20代後半から40代までの顧客。普段、窓口への来店機会が最も少ない層だけに、ATMを活用して商品を売り込む狙いだ。
同行でのATM利用者は全体で月間600万人。同行は「ATMは銀行にとって最大級の『営業窓口』。リテール(個人向け)営業に欠かせない存在になった」と話す。来店不要、インターネットで購入可能な商品をそろえ、売り込みを強化する。
膨大な量にのぼる投資信託の商品案内。これをビジュアルで訴える試みも登場した。池田泉州銀行は、アイパッドで投信商品を紹介する。画面にタッチして好みの商品を見ることができるほか、顧客を引きつけるためオリジナルの動画も作成し、視覚面での分かりやすさを追求した。同行は「投信商品に親しみをもってもらえれば」と期待を寄せる。11月から2店舗に導入しており、今後、順次拡大する。
銀行が個人向け営業に力を入れる背景には、本業の金利収入の減少が続いているという事情がある。22年9月中間決算は、国債など債券の売却益で増益となる金融機関の経営状態が浮き彫りになった。
収益を高めるには、投信販売など手数料収入の拡大が不可欠だ。個人客の一層の取り込みが求められており、ITの活用で業務効率化と顧客対応の強化という一挙両得を期待する。銀行側は「申し込みの手続き時間を省略する分、商品紹介、相談の時間が増えた。両者にメリットがある仕組みになったのでは」(りそな銀)と力を込める。
今後も進化が続きそうなITサービス。顧客満足の向上と収益拡大につながるか、その効果に注目が集まっている。
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